近頃よく耳にする働かないおじさんという言葉。
聞いてすぐに思い浮かんだのが、以前働いていた貿易会社の課長。
気さくで人当たりのいい人だったが、普段はどこの部署に所属しているのか?と思うほど、なかなか姿を見かけない。
たまに見かけても、お茶を飲んだり、新聞を読んだり、なんだかいつも手持ち無沙汰な感じで、部下が何か指示を仰いでも、すぐ隣にいる部長に回してしまう。
普段、雑談には応じてくれるのに、いざ仕事の話となると、
「あ、〇〇くん、お願い!」
と、プイとどこかへ行ってしまう。
これでこの人、一体幾ら貰っているのだろう。。
まだ20代そこそこだった私は、そんな課長を尊敬するどころか嫌悪さえ抱いていた。
そんな気持ちが伝わってか、私の退社が決まった時のあの課長の嬉しそうな顔!
悲しいかな、今でもとてもよく覚えている。
先輩社員が言うには、課長の主な仕事は接待。
平日は夜からが仕事。お付き合いのある会社のお偉いさん方との会食に、休日はゴルフ。
あの大きなお腹と1年中日焼けした体は、地道に職務を全うした証であるのだとか。
その真面目に働いたとされる体と、昼間ろくに仕事もせず、ニコニコ誰にでもゴマをする(ように見えた)課長の姿を、当時の私はとても毛嫌いしていたが、今思えばそれもなかなか万人のできることではないように思う。
とはいえ、やはり給料は気になるところだが。。
あれから長い年月を経て、現在のプリスクールの仕事を得る。
日本の企業によって開校したプリスクールとはいえ、外国人も多く働く職場で働かないおじさんとは無縁だと思っていた。
働かないおじさんとは日本だけに生息するもので、外国では仕事をしない人間はすぐに首を切られる、とそう勝手に思い込んでいた。
なので、日本の企業であろうと外国人が共に働けば、働かないおじさんなど生まれる訳などないと思っていた。
現に学生の頃にアルバイトをしていた英会話スクールでは、きちんと仕事をしない外国人講師は当然、同じ外国人の上司に解雇を言い渡されていたもの。
ところが、である。郷に入れば郷に従えとでもいうのか。。。
生まれてしまったのである。ここプリスクールで、外国人の働かないおじさんが。
彼はプリスクール開校当初からのスタッフで、現在役職有り。けど、働かない。
1日中、スマホばかりいじっている。
そしてフラフラ大した用もなく他クラスに顔を出してはレッスンの邪魔をする。
"Mr. Sb. Don't joke around!"
なんて、こどもやアシスタントに言われニヤニヤしている。
そんな雑談にはよく応じる彼も、スクールで何か問題があるとなると途端に姿をくらましてしまう。
特に外国人講師が持ち込んだ問題は、英語ネイティブである彼が直接本人と対応した方が、ちょっとしたニュアンスの違い、誤解を招くことなくスムーズに事を片付けられること間違いないにも関わらず、である。気がつけば、日本人の上司が対応している。
これでこの人、一体幾ら貰っているのだろう。。
外国人講師を束ねる立場でありながら、これではどうしようもない。
彼を通して輝かしい未来など見えるはずもなく、ここで働く外国人講師は長くて3年といったところだろうか。。
スクールを去って行く。皆、Mr.Sbのようにはなりたくないと一様に言って。。
Mr.Sbの働き方、そんなに嫌なら言ったらいいのに。お給料だって不公平でしょう?
外国人講師なら本部の人間にはっきりそう言いそうである。ところが、
別にいいんじゃない?
外国人講師達は口を揃えて言う。
彼がいないと長期休暇も取れないし、体調を崩したって気軽に休めないよ。
そう、働かないMr.Sbは、実は長期休暇も取らないし、土曜日だって出勤している。
平日の彼の休みの日だって、誰かが休めば代わりに出勤してくるし、彼の主な仕事はそう☝️スタンバイ。
そこにお金が払われてるなら、それでいいんじゃない?
接待もスタンバイも確かにやりたい仕事でもないけど、、なるほど。随分と割り切るのね。
でも、役職がついてるんだぞ!!
元々終身雇用という概念のない彼ら。ここで経験を積みながら常に条件の良いところを探している。
彼ら曰く、働かないおじさんを置いている会社、作り上げてしまう会社も悪いが、そこにいる自分もまた悪いのである。
また1年が過ぎ、働かないおじさんの給料が上がるのに苛立ちを覚えるぐらいなら、いっそのこと転職すべきだと。
ごもっとも。
私自身、このまま安定を取るか、思い切って表へ出るか、今少し心が揺れている。